週2回 計12回(途中から週１回、２週間に１回に変更）

●初診時の所見

初診時の触診では、肩から背中にかけての緊張が強く、首まわりの動きにも制限が見られた。身体全体がこわばっており、特に上半身の疲労感が顕著であった。

● 施術後の経過

初回の施術後には、肩や背中の緊張が緩み、体全体が軽くなったと実感された。ただし、この時点ではめまいの大きな変化は見られなかった。

その後も同じ施術方針を継続。合計で12回の施術を行った。回を重ねるごとに、ふわふわするめまいの頻度は次第に低下していった。特に6回目前後から「めまいが出ても以前ほど長引かない」「症状が軽く済む」といった変化が出始め、改善の兆しが見られるようになった。

ただし、施術期間中にはプライベートでの心配事が重なり、睡眠不足になる時期があった。その際にはめまいが一時的に強まることもあり、ストレスや生活リズムの影響が大きいことが確認できた。しかし、施術を継続することで症状は再び落ち着き、次第に安定していった。

最終的には、天候による影響を受けにくくなり、日常生活を送るうえで大きな不安を感じることが減った。肩こりについても強い緊張感が軽減され、仕事や生活に支障が出るほどの不快感はほとんどなくなった。

施術方針としては、この首肩こりが内耳の血流を悪くしてめまいが続いていると判断して、その筋緊張を日常生活で負担となったいる箇所から改善した。

百会：目の疲れ・精神疲労

曲沢：呼吸・循環の調整→リラックス

曲泉：ストレスによる上腹部の緊張改善→呼吸が深くなり精神的にリラックス・睡眠改善

足三里：胃腸の不調の改善→首肩こりに影響

今回の症例は、耳石によるめまい発作の既往があり、その後も「ふらつき」や「ふわふわ感」といった不安定な症状が長期にわたり続いていたケースである。首の動きや体位変換によって症状が悪化し、さらに気圧や気温の変化といった環境要因にも敏感で、生活全般に強い影響を与えていた。

病院では良性発作性頭位めまい症と診断がつくことが多く、発症から1ヶ月以内には良くなることが多い。しかし、本件のように長期間症状が続くことがある。

病院では1ヶ月を超えると明確な治療方針を示してもらえなくなることか多い。しかし、その隠れた根本原因は肩や背中の緊張が非常に強いことが大きく関与していると考えられる。上半身（特に耳周囲）の筋緊張は内耳の血流を悪くして平衡感覚機能を低下させることは理屈として成り立つ。

天候により症状が悪化したことも、気圧や気温により血管が膨張・収縮して内耳の血流悪化又は平衡感覚圧迫を起こしていたと分析できる。このことも上半身の筋緊張が強いことに起因している。

施術においては、百会・曲沢・曲泉・足三里といったツボを用いることでその結果、肩こりの軽減とともに、ふわふわするめまいの頻度や強さが徐々に低下していった。

経過中には睡眠不足や心理的ストレスによって一時的な悪化が見られたが、継続的に施術を行うことで安定を取り戻すことができた。これは、ストレスは自律神経系を乱して睡眠不足となり首肩こりの蓄積に関連していることを示している。このストレスに対してはお腹の緊張を緩和するツボを用いて呼吸を深くすることから自律神経の安定に努めた。