最近悪化した5年前から続く左耳のキーンという耳鳴り

50代・男性
担当鍼灸師:渡辺 賢司

50代男性の患者様が、左耳の「キーン」という高い音の耳鳴りを主訴に来院されました。

耳鳴り自体は最近始まったものではなく、約5~6年前から続いていました。

長年耳鳴りはあったものの、普段はそれほど強く意識することはなく、耳鳴りがある状態にもある程度慣れて生活されていました。

ところが、当院へ来院する約1週間前から、それまでより明らかに耳鳴りの音が大きくなりました

耳鳴りは一日中同じ大きさで聞こえているわけではなく、あまり気にならない時間もありました。一方で、車の中など周囲の音が少ない密室では耳鳴りを強く感じることが多く、「キーン」という音が大きくなると煩わしさを感じ、日常生活にも支障が出るようになっていました。

「5年以上前から耳鳴りはあるものの、最近になって急に音が大きくなった」というのが、今回来院するきっかけとなりました。

耳の状態を調べるため医療機関も受診しましたが、検査では特に異常は認められず、「異常なし」と説明を受けていました。

そこで、耳そのものだけではなく身体の状態も含めた別の方法を探し、鍼治療を希望して当院へ来院されました。

なお、既往歴として糖尿病がありました。

通院頻度・回数

週1~2回 計8回

施術と経過

●初診時の所見

初診では、耳鳴りの音や出現する状況について詳しく確認するとともに、耳周囲だけではなく、首や肩を含めた身体全体の状態を確認しました。

触診では、左耳の後方にある翳風付近の緊張に加えて、首から肩にかけて強い筋緊張が認められました。

今回の患者様は5年以上前から左耳の「キーン」という耳鳴りがありましたが、直近1週間でその音が大きくなっていました。

そのため当院では、耳鳴りそのものだけに着目するのではなく、初診時に確認された耳周囲や首肩の緊張を整えることを施術方針としました。

施術では、首肩の緊張緩和と可動域の改善を目的として、手背部と下腿のツボを使用しました。

さらに、左耳後方の翳風付近の緊張を整える目的で、骨盤と手首のツボにも鍼を行いました。

耳鳴りがあるからといって耳周囲に多くの鍼をするのではなく、触診によって確認された身体の緊張に合わせて、耳から離れた部位のツボも組み合わせて施術しました。

● 施術後の経過

【第1回目】

初回施術後、患者様からは、

「耳鳴りが出る頻度が少し減ったような気がする」

との報告がありました。

ただし、この時点では明確に大きく改善したというほどの変化ではありませんでした。

5年以上続いている耳鳴りであることから、初回の反応だけで判断するのではなく、身体の状態と耳鳴りの変化を確認しながら施術を継続することとしました。

【2回目以降】

2回目以降も、初診時に確認された**首肩と翳風付近の緊張**を一つの指標として、基本的には同様の方針で施術を継続しました。

施術を重ねるにつれて、耳鳴りの頻度や大きさにも徐々に変化が現れました。

ただし、毎回少しずつ症状が軽減していったわけではありません。

経過の途中には、再び耳鳴りを大きく感じることもありました。

それでも施術を継続していくと、来院のきっかけとなった「大きなキーンという耳鳴り」が出ることが少なくなっていきました。

最終的には、直近1週間で悪化していた大きな耳鳴りは落ち着き、5年以上前から感じていた元々の耳鳴りと同程度まで戻りました

耳鳴りそのものが完全にゼロになったわけではありません。

しかし、患者様が最も困っていた「以前より大きな耳鳴り」がほとんど出なくなったことで、車内などで耳鳴りを強く意識することも減少しました。

日常生活で耳鳴りに煩わされることが大幅に少なくなり、症状スコアも初診時の10から2まで改善しました。

特に効果のあったツボ(施術部位)

膀胱兪

骨盤周囲から身体全体のバランスを調整する目的で使用しました。

精霊 

手背部から首肩周囲の緊張を整える目的で使用しました。

養老 

手首から首周囲(特に翳風付近)の緊張を調整する目的で使用しました。

陰陵泉 

下腿から身体全体の緊張を調整する目的で使用しました。

三陰交 

下腿部から全身の状態を整える目的で使用しました。

 

※実際の施術では、その日の身体の状態を確認したうえで使用するツボを選択しています。

※以上のツボ以外にも合計10か所以下を施術

当院(鍼灸TAKA)の考察

今回の症例で重要なのは、耳鳴りが最近になって初めて発症したわけではないということです。

患者様には、すでに5~6年前から左耳の「キーン」という耳鳴りがありました。

しかし、それまである程度慣れて生活できていた耳鳴りが、来院1週間前から急に大きくなり、日常生活でも強く意識するようになっていました。

耳鳴りの場合、単純に「いつから耳鳴りがあるのか」という期間だけでなく、

  • どのような音なのか
  • 左右どちらに聞こえるのか
  • 常に聞こえるのか、時々なのか
  • 以前より音が大きくなっているのか
  • どのような場所で気になるのか
  • 日常生活にどの程度影響しているのか

といった点も重要だと当院では考えています。

 

今回の場合は、5年以上続いていた耳鳴りそのものより、「最近になって耳鳴りが大きくなり、生活の中で気になるようになったこと」が大きな問題でした。

そのため、長年続いている耳鳴りを完全になくすことだけを目標とするのではなく、まずは最近悪化した状態を以前の状態まで戻すことを目標として施術を行いました。

 

結果として8回の施術後には、最近出現していた大きな耳鳴りはほとんどなくなり、元々あった耳鳴りと同程度まで落ち着き、症状スコアも10から2まで改善しました。

耳鳴りは「ある・ない」だけで評価するのではなく、音の大きさや頻度、気になる場面、日常生活への影響がどの程度変化したかを見ることも大切です。

今回の症例では耳鳴りそのものは残っていましたが、患者様が困っていた「最近大きくなった耳鳴り」が落ち着き、日常生活への影響が大幅に減少したことを改善の一つの目安としました。

病院で「異常なし」と言われても耳鳴りが気になる方へ

耳鳴りで耳鼻科を受診し、聴力検査や耳の検査を受けても、明確な異常が見つからないケースがあります。

しかし、検査で異常が見つからないことと、耳鳴りによる困りごとがないことは別です。

今回の患者様も医療機関では異常なしとされていましたが、実際には左耳の「キーン」という耳鳴りが以前より大きくなり、特に車内などの静かな環境では強く意識する状態でした。

当院では、このような耳鳴りに対して耳だけを見るのではなく、**耳周囲や首肩などの緊張状態も確認**します。

今回も、左耳後方の翳風付近と首肩に緊張が確認されたため、その状態を一つの指標として鍼施術を行いました。

 

特に長期間続いている耳鳴りの場合、「耳鳴りを完全になくす」ということだけではなく、音が小さくなる、気になる頻度が減る、耳鳴りを意識せず生活できる時間が増えるといった変化も大切だと考えています。

もちろん、耳鳴りにはさまざまな原因が考えられます。

特に、突然耳鳴りが強くなった場合や、急な聴力低下・耳閉感・めまいなどを伴う場合には、まず耳鼻科を受診して必要な検査を受けることが重要です。

そのうえで、医療機関で大きな異常が見つからないにもかかわらず耳鳴りが続いている場合や、今回のように以前からある耳鳴りが最近になって強くなった場合には、鍼治療を選択肢の一つとして検討することもできます。

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