朝起きられず学校に行けない・朝の腹痛が続く起立性調節障害が改善した症例

10代男子
担当鍼灸師:東尾 静香

10代の男子中学生が、朝起きられないことと、朝に強く現れる腹痛・上腹部の締め付け感を主訴に来院されました。

症状が始まったのは、来院する約1カ月半前です。

最初に気になるようになったのは、お腹の不調でした。特に上腹部がギュッと締め付けられるような感覚があり、腹痛を伴うこともありました。

症状には時間帯による違いがあり、特に朝に腹痛が出やすいという特徴がありました。

さらに同じ頃から、朝になってもなかなか起きられない状態が続くようになりました。夜は眠っているにもかかわらず、朝になると身体を起こすことが難しく、学校へ行こうと思っても起き上がることができません。

そのため欠席する日が増え、次第に学校へ通うこと自体が難しくなっていました。

本人にとっても「学校へ行きたいのに朝になると身体が動かない」という状態が続き、日常生活に大きな影響が出ていました。

医療機関を受診したところ、症状の経過などから起立性調節障害の疑いと診断されました。

しかし、朝起きられない状態や腹部症状が続いていたため、身体の状態を別の方向から整える方法として鍼施術を希望し、当院へ来院されました。

通院頻度・回数

週1~2回 計8回

施術と経過

●初診時の所見

初診時には、朝起きられないという症状だけを見るのではなく、背中や腹部を含めて身体全体の状態を確認しました。

触診で特に目立ったのが、背中とお腹の緊張です。

腹部には力が入りやすく、本人が訴えていた上腹部の締め付け感とも一致するような張りがみられました。また、背中にも緊張が認められ、身体全体としてリラックスしにくい状態になっていました。

今回の症例では、

朝起きられない+朝になると腹痛が起こる+上腹部が締め付けられる

という複数の症状が同じ時期に現れていることが特徴でした。

起立性調節障害では「朝起きられない」という症状が注目されやすいですが、今回の患者さんの場合は、消化器系の不調も大きな問題となっていました。

そこで当院では、実際に触診で確認できた腹部と背中の緊張も含めて施術方針を考えました。

● 施術後の経過

【第1回】

初回は、緊張している腹部や背中へ直接強い刺激を加えるのではなく、脚と骨盤周囲のツボを中心に鍼施術を行いました。

初回の施術後、最初に現れた変化は睡眠でした。

それまでは身体の緊張が抜けにくい状態でしたが、施術後には夜、比較的すぐに眠れるようになったとのことでした。

一方、この時点では朝起きられない状態については大きな変化はありませんでした。

そのため、一度の施術だけで判断せず、身体の状態を確認しながら同じ方向性で施術を継続することにしました。

【第2回以降】

2回目以降も、脚と骨盤周囲への施術を中心に継続しました。

施術を重ねるにつれて、少しずつ朝の状態にも変化が現れました。

それまで朝になるとなかなか身体を起こすことができなかった状態から、徐々に自分で起きられる日が増えてきました。

同時に、朝に起こりやすかった腹痛や上腹部の締め付け感についても、以前より気にならない日が増えていきました。

今回の症例では、

夜に眠りやすくなる

↓

朝起きられる日が増える

↓

朝のお腹の不調も減っていく

というように、一つの症状だけが突然なくなるのではなく、段階的に身体の変化が現れたことが特徴でした。

その後も施術を続け、計8回の施術を行いました。

施術期間中には大きな症状の再燃や新たな症状の出現もなく、最終的には朝の起床困難と腹部症状が大幅に軽減し、学校生活へ戻れる状態まで改善しました。

使用したツボ(施術部位)

胞肓

臀部・骨盤周囲にあるツボです。

今回の症例では、骨盤周囲の筋緊張を整え、姿勢から腹部や背中へかかっている負担を軽減することを目的として使用しました。

三陰交(左右)

下腿の内側にある東洋医学のツボです。

今回確認された腹部の張りや緊張に対して、症状のある腹部へ直接鍼をするのではなく、離れた場所からアプローチする目的で使用しました。

※以上のツボ以外にも合計10か所以下を施術

まとめ:当院(鍼灸TAKA)の症状分析

今回の症例で重要だったのは、「朝起きられない=朝だけの問題」と考えなかったことです。

起立性調節障害では、自律神経による血圧調節がうまく働かず、起き上がった際に下半身へ血液がたまりやすくなることで、脳や身体への血流が不足し、倦怠感や頭痛、めまい、立ちくらみなどが現れると考えられています。

一方、鍼灸TAKA(当院)では、さらに「なぜ自律神経や血圧を調節しにくい身体の状態になっているのか」というところまで考えて身体を確認しています。

 

当院では、長時間の同じ姿勢やスマートフォン・ゲームの使用、ストレス、食生活、睡眠不足などの生活習慣が重なることで、首肩や背中、腹部に緊張が生じると考えています。

首肩や背中の筋肉が緊張すると、血液循環に負担がかかり、血圧も安定しにくくなります。

一方、腹部が張って緊張すると、胃腸が働きにくくなるだけでなく、腹式呼吸がしづらくなり、呼吸も浅くなります。

首肩・背中の緊張

↓

血液循環への負担・血圧の不安定

そして、

腹部の張り・緊張

↓

胃腸の働きの低下・呼吸の浅さ

こうした身体の状態が重なることで自律神経が乱れやすくなり、起立性調節障害の症状を繰り返す背景になると当院では考えています。

 

今回の患者さんでは、初診時に実際に背中と腹部の両方に緊張が確認されました。

さらに、「朝起きられない」だけでなく、「朝になるとお腹が痛い」「上腹部が締め付けられる」という腹部症状も同時に現れていました。

そのため今回は、腹部と背中の緊張が身体に負担をかけ、自律神経が朝の活動状態へ切り替わりにくい身体環境につながっている可能性があると考えました。

 

そこで施術では、症状が出ているお腹だけに鍼をするのではなく、

①骨盤周囲を整えて、姿勢から腹部・背中への負担を減らす

②東洋医学のツボを使って、腹部の張り・緊張へアプローチする

③背中・脊柱周囲の緊張を整え、自律神経に負担をかけにくい身体の状態を目指す

という考え方で施術を進めました。

これは、当院の起立性調節障害に対する基本的な施術方針である、「骨盤」「東洋医学のツボ」「脊柱」から身体を整えていくアプローチに基づいています。

 

今回の症例で興味深かったのは、最初に変化したのが「朝起きられるかどうか」ではなく、夜の寝つきだったことです。

初回施術後から夜に眠りやすくなり、その後、施術を重ねるにつれて朝起きられる日が増え、さらに朝の腹痛や上腹部の締め付け感も徐々に軽減していきました。

 

今回の経過からも、起立性調節障害では「朝起きられない」という一つの症状だけを見るのではなく、首肩・背中、腹部、骨盤、姿勢、胃腸、呼吸など身体全体の状態を確認し、その人に負担となっている部分を整えていくことが大切だと当院では考えています。

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