発症直後の突発性難聴 耳閉感・耳鳴り・聴力低下が改善

20代・男性
担当鍼灸師:渡辺 賢司/東尾 静香

朝起きた際、突然耳が聞こえにくくなっていることに気づき、医療機関を受診したところ突発性難聴と診断されました。

病院ではステロイドによる治療を受けましたが、本人が期待していたほどの改善はみられませんでした。

特につらかったのが、常に続く耳が詰まったような耳閉感です。周囲の音だけでなく人の声も聞き取りにくく、日常の会話にも不便を感じていました。

さらに「キーン」という高い音の耳鳴りが続き、静かな場所でも耳鳴りが気になってしまう状態でした。

仕事中も耳鳴りに意識が向いてしまい、以前より集中しづらくなっていました。耳の詰まり、聞こえにくさ、耳鳴りが同時に続いていることへの不安もあり、病院での治療に加えて鍼治療を受けたいと考え、鍼灸TAKAへ来院されました。

通院頻度・回数

週2~3回 計5回

施術と経過

●初診時の所見

初回来院時に身体の状態を確認すると、特に目立っていたのが背中と顎周囲の強い緊張でした。

この方は建設業に従事しており、仕事では重い物を持ったり、手や腕に力を入れたりする機会が多い生活を送っていました。

耳の症状というと、耳そのものだけに原因を求めたくなります。しかし鍼灸TAKAでは、耳周辺だけを見るのではなく、首・肩・背中・顎・手など身体全体の緊張状態を確認することを大切にしています。

今回の症例では、仕事による手や腕への負担に加え、背中から肩周囲、そして顎周囲まで緊張が連動している状態が確認できました

そこで、まず背中の緊張を整えるために背部のツボを使用しました。また、日常的に負担がかかっている手や腕の状態も考慮し、手のツボにも鍼を行いました。

さらに、顎周囲には明らかな硬さが確認できたため、骨盤周囲のツボを使用して顎の緊張を調整しました。

施術後に再度身体を確認すると、初診時にみられた顎周囲の緊張に変化が確認できました。

そのため、耳だけに直接アプローチするのではなく、仕事によって負担のかかっている手や腕、背中、顎周囲の緊張を総合的に整える方針で施術を継続しました。

● 施術後の経過

【第1回目】

背中と顎周囲の緊張を中心に身体の状態を確認しました。

建設業という仕事柄、重い物を持つ機会が多く、手や腕、背中への負担が大きいことを考慮し、背中と手のツボを中心に施術しました。

また、骨盤周囲のツボを使用して顎周囲の緊張を調整しました。

初回は身体の緊張を整え、耳の症状がどのように変化するかを確認することとしました。

【第2回目】

初回施術後から、耳の詰まり感が軽減し、以前より音が聞こえやすくなってきたとのことでした。

来院当初は耳が常に塞がれているような感覚がありましたが、その強さに変化が現れ始めました。

身体の状態を確認しながら、初回と同じ方向性で施術を継続しました。

【第3回目】

この頃には、来院時に強く感じていた耳の詰まり感は完全になくなりました。

一方で、高い音の聞こえにくさと「キーン」という耳鳴りは残っていました。

耳閉感がなくなったことで日常生活での不快感は軽減していましたが、耳鳴りと高音域の聞こえについて引き続き経過をみながら施術を行いました。

【第4回目】

聞こえの状態はさらに改善し、人との会話で困ることがなくなりました。

また、耳鳴りの音も以前より小さくなり、仕事中に耳鳴りへ意識が向くことが減ってきました。

来院当初は耳鳴りによって集中力が低下していることを気にされていましたが、この頃には仕事にも集中できるようになってきたとのことでした。

単に聞こえだけではなく、耳鳴りによる日常生活への影響にも改善がみられました。

【第5回目】

耳鳴りもかなり落ち着き、本人からも日常生活で困ることはなくなったとの報告がありました。

耳の詰まり感は消失した状態を維持し、会話にも問題がなく、仕事中の集中を妨げていた耳鳴りも大幅に軽減していました。

日常生活上の支障がなくなったことを確認し、今回の突発性難聴に対する施術は終了としました。【第4回目】

特に効果のあったツボ(施術部位)

膀胱兪

骨盤周囲のバランスを調整し、顎関節を整える目的で使用しました。

合谷

手にあるツボ。首周囲(特に胸鎖乳突筋)の緊張を調整する目的で使用しました。

手三里

上腕にあるツボ。首周囲(特に胸鎖乳突筋)の緊張を調整する目的で使用しました。

附分

背中にあるツボ。後頚部から顎関節の緊張を調整する目的で使用しました。

 

※以上のツボ以外にも合計10か所以下を施術

当院(鍼灸TAKA)の考察

今回の症例で特徴的だったのは、耳の症状だけでなく、建設業による身体への負担と、背中・顎周囲の強い緊張が同時に確認されたことです。

突発性難聴では、まず耳鼻科などの医療機関を受診し、必要な検査や治療を受けることが重要です。本症例でも医療機関で突発性難聴と診断され、ステロイド治療を受けています。

 

一方、鍼灸TAKAでは病院での治療とは異なる視点から、耳の周囲だけでなく全身の状態を確認しました。

特に今回注目したのが、手・腕への負担、背中の緊張、顎周囲の硬さのつながりです。

建設業では、重い物を持つ、握る、支えるといった動作を繰り返します。そのため手や腕だけではなく、肩や背中にも継続的な負担がかかります。

 

さらに今回の症例では顎周囲にも強い緊張が確認できました。

当院では、このような身体の緊張が耳周囲の状態にも影響を与え、耳閉感や耳鳴りが長引く一つの要因になっていた可能性があると考えました。

そこで、耳だけに施術を集中させるのではなく、手・背中・骨盤周囲のツボを使いながら身体全体の緊張を整えました。

 

その結果、まず耳閉感が軽減し、3回目には消失。その後、聞こえや耳鳴りにも変化が現れ、5回目には日常生活で困ることがない状態まで改善しました。

特に印象的なのは、耳閉感の改善 → 会話の聞き取りやすさの改善 → 耳鳴りの軽減 → 仕事への集中力の回復というように、段階的に日常生活が取り戻されていった点です。

突発性難聴では「聴力がどこまで戻ったか」だけに注目しがちですが、実際に患者さんが困っているのは、耳の詰まりや耳鳴り、人の声の聞き取りにくさ、それによって仕事や生活に集中できないことなど多岐にわたります。

 

今回の症例は、医療機関での治療を受けながらも耳閉感や耳鳴り、聞こえにくさが残っている場合に、耳だけではなく、仕事や生活習慣によって生じている身体の緊張まで確認することの重要性を示した症例でした。

鍼灸TAKAでは今後も、突発性難聴という病名だけを見るのではなく、一人ひとりの仕事内容や身体の使い方、首肩・背中・顎などの状態まで丁寧に確認し、その方に合わせた施術につなげていきます。

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