発症2日の突発性難聴 初回施術後に聴力が回復

40代・男性
担当鍼灸師:渡辺 賢司/東尾 静香

40代男性の患者様が、右耳の聴力低下・耳鳴り・耳閉感を主訴に来院されました。

症状が現れたのは、当院へ来院するわずか2日前のことです。

最初に感じたのは、右耳が塞がったような「耳の詰まり」でした。その後、右耳の聞こえが急激に悪くなり、耳鳴りも現れるようになりました。

一時的な症状ではなく、聴力低下・耳鳴り・耳閉感はいずれも持続しており、大きな変動もありませんでした。

突然片側の耳が聞こえにくくなったことで、普段の会話や周囲の音が聞き取りづらくなり、日常生活だけでなく仕事にも支障を感じる状態でした。

そこで医療機関を受診したところ、突発性難聴の疑いと診断されました。

幸い、発症直後からまったく変化がなかったわけではなく、当院へ来院した時点では、発症時と比較して症状全体が3〜4割程度改善していました。右耳の詰まり感についても、発症直後より軽くなっていました。

しかし、まだ左右の聞こえ方には差があり、耳鳴りや耳閉感も残っていたため、少しでも早く回復させたいということで鍼治療を希望されました。

発症から当院への来院までがわずか2日だったことから、当院でも早期から施術を開始することとしました。

通院頻度・回数

週2回 計2回

施術と経過

●初診時の所見

初診時には、耳周辺だけに限定せず、首・肩から全身の状態まで確認しました。

触診で特に確認されたのが、

  • 左肩の筋緊張
  • 首すじの緊張

でした。

今回の症状は右耳に現れていましたが、身体の緊張は必ずしも症状側だけに現れるとは限りません。

実際、この患者様では右耳の聴力低下や耳閉感に対して、反対側である左肩にも明確な緊張が確認されました

そのため、「右耳の症状だから右耳周辺だけを施術する」という考え方ではなく、身体全体の左右差や首・肩の状態を確認したうえで施術部位を選択しました。

今回使用したのは、主に下肢と手のツボです。

耳そのものへ多くの鍼を行うのではなく、手や脚から首肩を含めた身体の緊張を調整することを目的として施術しました。

● 施術後の経過

【第1回目】

初回は、手と下肢にあるツボを中心に鍼施術を行いました。

施術後はそのまま帰宅していただき、右耳の聞こえ方、耳鳴り、耳閉感がどのように変化するか経過をみてもらいました。

初回の段階では、すでに発症時から3〜4割程度の自然な改善がみられていたため、鍼治療後にどこまで変化するのかを慎重に確認することとしました。

【第2回目】

2回目の来院時に経過を確認したところ、患者様から「聴力が回復した」との報告がありました。

初回来院時に残っていた右耳の聞こえづらさについて改善がみられ、経過も良好でした。

そのため、追加で何度も施術を行う必要はないと判断し一連の治療を終了しました。

特に効果のあったツボ(施術部位)

合谷

手から首周囲(特に胸鎖乳突筋)の緊張を調整する目的で使用しました。

開魄

首(胸鎖乳突筋)から耳周囲にかけての緊張を整える目的で使用しました。

玉竧

下肢から骨盤を調整し全身のバランスを整える目的で使用しました。

三陰交

下腿部の経絡から自律神経を整える目的で使用しました。

 

※以上のツボ以外にも合計10か所以下を施術

当院(鍼灸TAKA)の考察

今回の症例で最も特徴的なのは、発症からわずか2日で当院へ来院されたことです。

右耳の詰まりから始まり、その後に聴力低下と耳鳴りが現れ、医療機関では突発性難聴の疑いと診断されました。

突発性難聴が疑われる場合、当院が特に重要だと考えているのが発症からどれくらいの期間で治療を開始するかという点です。

今回の患者様は症状が出てから長期間様子を見ることなく医療機関を受診し、その後すぐに鍼治療も開始しています。

その結果、2回目の来院時には聴力の回復が確認され、追加の鍼施術を必要とせず終了することができました。

ただし、今回の改善を1回の鍼治療だけによるものと断定することはできません。

非常に重要なのは、初回来院時点ですでに症状が発症時より3〜4割程度改善していたという事実です。

つまり、患者様自身の回復過程がすでに始まっているタイミングで鍼治療を行った症例と考える必要があります。

そのうえで、初診時には首や肩に筋緊張が確認されていたため、当院では手や下肢のツボを使い、身体の緊張を整えることを目的として施術を行いました。

そして次回来院時には、残っていた聴力低下についても回復が確認されました。

今回の症例から考えられるポイントは、「悪くなってから鍼治療だけで急激に改善させた」ということではなく、「発症直後の回復しやすい時期に身体の状態を整える施術を開始できた」ということです。

これは、これまでご紹介してきた突発性難聴の症例の中でも、早期治療の重要性を考えるうえで特徴的な症例です。

発症2日で治療を開始できたことの意味

突発性難聴の症例を積み重ねていくと、患者様によって来院までの期間には大きな違いがあります。

発症から数日で来院される方もいれば、2週間以上経過してから来院される方、病院での治療を続けても症状が残り、数週間後に鍼治療を検討される方もいます。

今回の患者様は、その中でも発症2日という非常に早い段階で来院されました。

そして来院時点ですでに一定の改善傾向があり、さらに初回施術後の経過も良好で、2回目の来院時には聴力が回復していました。

当院では、突発性難聴に対する鍼治療について「何回受ければ必ず改善する」という考え方はしていません。

症状の程度、年齢、発症からの期間、既往歴、医療機関での治療内容などによって経過は大きく異なるためです。

しかし、少なくとも発症から時間が経過してしまう前に適切な対応を始めることは重要だと考えています。

今回の症例は、その考え方を示す一例となりました。

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