発症約2ヶ月の突発性難聴 3回で耳閉感・めまいが改善

30代・女性
担当鍼灸師:渡辺 賢司/東尾 静香

30代女性の患者様が、右耳の詰まり感、聞こえにくさ、くらくらするめまいを訴えて来院されました。

症状が始まったのは12月末でした。突然、右耳の聞こえ方に違和感が現れ、その後も症状が続いたため、1月末に医療機関を受診。聴力検査などを受け、突発性難聴の疑いと診断されました。

病院で治療を受けたことで、低下していた聴力はある程度まで回復しました。しかし、聞こえ方が改善した後も、右耳が詰まっているような耳閉感と、くらくらするめまいが残っていました。

さらに、当院へ来院する約1週間前にはめまいが急激に悪化。一時は立っていることができないほど強いめまいが現れ、それに伴って右耳の聞こえ方も再び悪化しました。

病院で治療を受けて聴力がある程度回復していたにもかかわらず、耳の詰まりやめまいが続き、さらに症状が強くなったことで日常生活にも制限が生じている状態でした。

当院へ来院されたのは、最初に症状が現れてから約2ヶ月が経過した時期です。

今回の症例では、単純な聴力低下だけではなく、

  • 右耳の詰まり感
  • 右耳の聞こえにくさ
  • くらくらするめまい
  • めまい悪化時の聞こえの悪化

といった複数の症状が重なっていました。

そこで耳周囲だけを見るのではなく、首・肩・背中なども含めて身体の状態を確認しました。

通院頻度・回数

週1回 計3回

施術と経過

【初診時】

初診時に身体の状態を確認すると、特に目立っていたのが首と肩甲骨の間(肩甲間部)の強い緊張でした。

突発性難聴というと、どうしても「耳だけの問題」と考えがちですが、当院では耳の周囲だけでなく、首・肩・肩甲骨周囲などの状態も確認しています。

今回の患者様では耳閉感だけではなく、くらくらするめまいも残っていたため、首から背中にかけての緊張状態にも着目しました。

施術では、手のツボと肩甲間部を中心に鍼を行いました。

耳周囲に多くの鍼を行うのではなく、初診時に確認された身体の緊張をもとに施術部位を選択しました。

初回施術直後の段階では、耳閉感やめまいが完全になくなったわけではありません。そのため、施術後の状態を確認しながら継続して経過を見ることとしました。

【2回目】

2回目の来院時には、患者様から

「耳の詰まり感が前より減っている」

との報告がありました。

初回来院時に強く感じていた右耳の閉塞感に変化が現れ始めていました。

耳の詰まり感が軽減していることを確認できたため、初回と同様に、手のツボと肩甲間部を中心とした施術を継続しました。

また、耳の症状だけでなく、首や肩甲間部の緊張状態についても確認しながら施術を行いました。

【3回目】

さらに同様の方針で施術を継続すると、右耳の詰まり感は大きく軽減していきました。

そして、耳閉感が軽減していくのに伴い、それまで続いていたくらくらするめまいも消失していきました。

来院前には立つことができないほど強いめまいが現れていましたが、そのような症状もみられなくなりました。

合計3回の施術で、耳閉感とめまいは大幅に改善。

施術期間中に症状の再燃や新たな症状の出現も認められなかったため、一連の施術を終了しました。

特に効果のあったツボ(施術部位)

合谷 

手にあるツボ。首周囲(特に胸鎖乳突筋)の緊張を調整する目的で使用しました。

手三里 

前腕にあるツボ。首から肩にかけての緊張を調整する目的で使用しました。

四括 

肩甲骨周囲の緊張に対して使用しました。

三括 

肩甲間部から首へ続く緊張を調整する目的で使用しました。

 

※実際の施術では、その日の身体の状態を確認したうえで使用するツボを選択しています。

※以上のツボ以外にも合計10か所以下を施術

当院(鍼灸TAKA)の考察

今回の症例で特徴的だったのは、病院での治療によって聴力はある程度回復したものの、耳閉感とめまいが残っていたことです。

突発性難聴では、聴力そのものが改善してきても、

「聞こえは戻ってきたけれど、耳の詰まりが取れない」

「耳の違和感と一緒に、めまいやふらつきが残っている」

といった症状に悩まれることがあります。

今回の患者様も、病院で治療を受けたことで聴力はある程度回復していました。

しかし、耳閉感とめまいは残存。さらに来院1週間前にはめまいが悪化し、立つことができないほどの状態となり、同時に聞こえ方も悪化していました。

初診時に身体を確認すると、首だけでなく肩甲骨の間にも顕著な緊張が認められました。

そこで当院では、耳そのものだけに施術を集中させるのではなく、首や肩甲間部の緊張にも着目しました。

その結果、最初に変化が現れたのが耳閉感でした。

2回目には耳の詰まり感が軽減し、その後さらに耳閉感が改善していくのに伴って、めまいについても消失していきました。

最終的には、3回の施術で耳閉感・めまいともに大幅な改善がみられました。

発症から約2ヶ月経過していても残存症状に変化がみられた症例

今回の症例は、これまで紹介してきた「発症から数日以内に鍼治療を開始した突発性難聴」の症例とは少し異なります。

症状が始まったのは12月末で、当院へ来院されたのは3月。つまり、突発性難聴の発症から約2ヶ月が経過してから鍼治療を開始した症例です。

さらに、通院頻度も週1回程度と、当院で突発性難聴に対して行う施術としては比較的少ない頻度でした。

それにもかかわらず3回の施術で大きな変化がみられた理由として重要なのが、今回の主な施術対象が「低下した聴力そのもの」ではなかったことです。

 

患者様は病院で治療を受けた段階で、低下していた聴力についてはすでにある程度回復していました。一方で、

  • 耳が詰まった感じが取れない
  • くらくらするめまいが残っている
  • 症状が悪化すると聞こえ方にも影響する

といった症状が残っていました。

今回の鍼治療では、このような病院治療後に残っていた耳閉感やめまいなどの残存症状を主な対象として施術を行っています。

初診時には首と肩甲間部に顕著な緊張が認められたため、そこに着目して施術を行いました。その結果、まず耳閉感が軽減し、それに伴ってめまいも消失し、3回の施術で大幅な改善がみられました。

 

ここで注意したいのが、「発症から2ヶ月経過していても、突発性難聴による聴力低下が同じように改善する」という意味ではないことです。

当院では、突発性難聴によって低下した聴力の回復を目指す場合は、発症からできるだけ早い段階で治療を開始することが非常に重要だと考えています。突然聞こえが悪くなった場合には、まず早急に耳鼻科を受診し、必要な検査や治療を受けることが第一です。

一方、今回のように病院での治療によって聴力はある程度回復していても、耳閉感やめまい、耳の違和感などが残っているケースでは、発症から時間が経過していても鍼治療を検討する余地があります。

今回の症例は、

「聴力低下は早期治療が重要。しかし、病院治療後に残った耳閉感やめまいについては、時間が経過していても改善を目指せる可能性がある」

という、突発性難聴の治療時期を考えるうえでも参考になる症例だと考えています。

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