発症時期がはっきりせず、うがいの水漏れ・目の閉じにくさが続いていた顔面神経麻痺が11回の鍼施術で改善

30代男性
担当鍼灸師:東尾 静香、渡辺 賢司

顔面神経麻痺による口元と目の動かしにくさを主訴に来院されました。

発症時期ははっきりしていませんでしたが、来院時には顔面神経麻痺による症状が続いており、日常生活のさまざまな場面で不便を感じていました。

特に困っていたのが、うがいをすると口元から水が漏れてしまうことでした。口をしっかり閉じようとしても思うように力が入らず、水を口の中に保つことが難しい状態でした。

また、目を十分に閉じることができないため、シャンプーをすると目に水が入ってしまうこともありました。

顔面神経麻痺では、顔の左右差や表情の変化だけではなく、「口を閉じる」「目を閉じる」といった日常的な動作にも影響が現れることがあります。

今回の患者様も、こうした状態が続いていることから、症状の改善を希望して当院へ来院されました。

また、以前から慢性鼻炎があり、普段から歯を食いしばる癖も自覚していました。

通院頻度・回数

週1~2回 計11回

施術と経過

●初診時の所見

今回の症例で当院が特に着目したのは、首から胸椎1番付近にかけての強い緊張でした。

顔面神経麻痺というと、どうしても動かしにくくなっている顔そのものに注目しがちです。

しかし当院では、顔だけを見るのではなく、耳の後ろや首、肩、背中、骨盤、手足なども確認し、顔や首周辺に負担をかけている身体の状態がないかを調べています。

今回の患者様では、特に首から上背部にかけて筋肉の緊張が強く現れていました。

さらに本人には食いしばりの自覚がありました。

食いしばる際には顎周辺だけでなく、首や肩にも力が入りやすくなります。そのため今回の患者様では、こうした普段の身体の使い方も首周辺の緊張を強める一つの背景になっている可能性を考えました。

慢性鼻炎についても確認しましたが、慢性鼻炎や食いしばりそのものが顔面神経麻痺を直接引き起こしたと判断したわけではありません。

あくまで患者様の身体全体を把握するうえでの特徴として捉えました。

また、今回の症例では発症時期が明確ではなく、来院時にはすでに目や口の動かしにくさが続いていました。

そのため、一度の施術による変化だけで判断するのではなく、首から上背部の緊張と、目・口の動きがどのように変化していくのかを継続的に確認する方針としました。

● 施術後の経過

【第1回】

初回施術では、ふくらはぎ・手・頭部のツボを中心に鍼施術を行いました。

施術後、身体の状態を確認しましたが、この段階では患者様自身が感じるほどの顔面症状の大きな変化は認められませんでした。

うがいの際の水漏れや、シャンプー時に目へ水が入る状態にも、すぐに明確な改善が現れたわけではありませんでした。

しかし今回は発症時期が明確ではなく、症状がすでに続いていたことに加えて、首から上背部にかけて強い緊張も確認されていました。

そのため、初回の反応だけで判断せず、身体の緊張と顔の動きの両方を確認しながら施術を継続することにしました。

【2回目以降】

2回目以降も、身体の状態を確認しながら同様の方針で施術を行いました。

今回の症例では、数回の施術で一気に症状がなくなったわけではありません。

施術を重ねるにつれて、目や口の動きが少しずつ改善し、それに伴って日常生活で感じていた不便も段階的に減っていきました。

目を閉じる動きが改善してくることで、シャンプーをした際に目へ水が入りにくくなりました。

さらに口元の動きも徐々に改善し、うがいをした際に口から水が漏れてしまうことも少なくなっていきました。

その間も首から上背部の状態を毎回確認し、その時の身体の緊張に合わせて施術を調整しました。

【施術後半】

施術を継続すると、目と口の動きによる日常生活上の支障はさらに減少しました。

今回の症例では、単純に「顔が何%動くようになった」ということだけではなく、

「シャンプーをしても目に水が入りにくくなった」

「うがいをしても口から水が漏れなくなった」

というように、実際の生活の中で困っていた動作ができるようになったかを改善の目安としました。

最終的に、計11回の施術で日常生活において顔の動きに困ることはなくなりました。

施術期間中、大きな症状の再燃や新たな症状の出現は認められませんでした。

使用したツボ(施術部位)

築賓・飛揚

ふくらはぎにあるツボです。首から背中にかけての緊張を緩和して、食いしばり症状改善の目的で使用しました。

渝谷

手にあるツボです。胸椎1番の緊張を緩和して目の症状改善する目的で使用しました。

目窓

頭部にあるツボです。目の動きや頭頸部の状態を改善する目的で使用しました。

上巨虚

下腿にあるツボです。胸椎1番の緊張を緩和して目の症状改善する目的で使用しました。

 

※以上のツボ以外にも合計10か所以下を施術

まとめ:当院(鍼灸TAKA)の症状分析

今回の症例の特徴は、発症時期がはっきりせず、来院時にはすでに目や口の動かしにくさが続いていたことです。

さらに身体を確認すると、首から胸椎1番付近にかけて著明な緊張が認められ、普段から食いしばりの自覚もありました。

そのため当院では、麻痺している顔だけに注目するのではなく、首から上背部にかけての強い緊張を今回の重要な身体所見の一つと考えました。

 

今回の経過でも特徴的だったのが、初回施術後から急激に顔の動きが変化したわけではなかったことです。

これまでの顔面神経麻痺の症例の中には、比較的早い段階から変化を感じられるケースもあります。しかし今回の場合は、症状が一気に変化するのではなく、施術を重ねる中で目と口の動きが徐々に改善していきました。

 

首から上背部の緊張を確認しながら施術を継続する

↓

少しずつ目を閉じやすくなる

↓

シャンプー時に目へ水が入りにくくなる

↓

口元の動きも改善する

↓

うがいをしても水が漏れにくくなる

というように、日常生活の変化を一つずつ確認しながら施術を進めました。

 

そのため今回は、日常生活で顔の動きに困らない状態になるまで計11回の施術を要しました。

顔面神経麻痺は、一般的に発症後できるだけ早い段階で医療機関を受診し、原因を調べたうえで適切な治療を受けることが重要です。

一方で、発症から時間が経過し、病院での治療を受けても目や口の動かしにくさが長く残っている方もいます。

このようなケースでは、「時間が経っているから」という理由だけで身体を見るのではなく、現在の身体に何が残っているのかを探すことも大切だと当院では考えています。

 

鍼灸TAKAでは、その一つの手がかりとして、首肩や背中の筋肉の緊張、食いしばり、姿勢や身体の使い方など、日常生活の中で慢性的に繰り返されている身体への負担を確認します。

今回の患者様でも、発症時期そのものは明確ではありませんでしたが、実際に身体を確認すると、首から胸椎1番付近まで強い緊張が残り、さらに普段から食いしばる習慣もありました。

 

食いしばりなどによって身体に力が入りやすい

↓

首から上背部の緊張が慢性的に続く

↓

顔や首周辺にも負担がかかりやすい身体環境が続く

(顔面部への神経や血流の循環が悪くなる)

という点にも着目し、身体全体から施術を行いました。

 

もちろん、筋肉の緊張や食いしばりが顔面神経麻痺そのものの原因であると断定することはできません。

しかし、発症から時間が経過している場合でも、現在の身体を詳しく確認すると、首肩の強い緊張や食いしばりなど、改善できる余地が残っていることがあります。

今回の症例では、そうした慢性的に続いていた身体の緊張を一つずつ整えていくことが、改善への糸口になった可能性があると考えています。

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